今回は、サファヴィー朝写本芸術の最盛期に作られた主な写本と物語について簡単に解説しようと思います。
物語の解説に使用した参考文献は、たまたま図書館で見つけた『ペルシアの詩人たち』(オリエント選書、1980)です。古い本ですが、ざっと基礎知識は頭に入るのではないかと思います。
1.王書/シャー・ナーメ(Shahnameh) 作:フィルドゥスィー 写本編纂時期:1522?~1535?
<物語について>
ペルシア文学の中でも最も有名な長編民族叙事詩。イラン民族固有の伝説を基礎とし、天地創造からササン朝滅亡に至るまでのイラン歴代の王者や英雄の事跡を、純粋なペルシア語をもってうたいあげた。ゾロアスター教的善悪二元論・宿命論・運命論的性格が強い。(参考:ブリタニカ)
これは岩波文庫版(訳:岡田恵美子)を読みました。残念ながら尺の関係で伝説時代~英雄時代までしか載っていませんが、詩から文章へ書き下してくれているので読みやすいです。
フィルドゥスィーがアラブ人とペルシア人の違いを強調しようとしたのは明白で、「アラブ人は四角い石(カーバ神殿)に向かって祈るけど、我々イラン人は昔は火に向かって祈ってたんだよね~」なんてことも書いてます。
イスラム教徒なのにゾロアスター教に嫌悪感を抱いている感じもまったくしません。「みんな死ぬのに現世に執着しちゃいかんよね」とか「残酷だけど運命だから受け入れなきゃね」とか割と日本人なら納得できるような世界観でもあるので興味深いです。
しかし、イラン人の心を掴むっぽいロスタムとソホラーブの話はなんか納得できない。
<写本について>
スルタン・ムハンマドを編纂責任者として、イスマーイール時代から作られタフマースプに献上されたもの。およそ280枚の絵が収められ、”Shah Tahmasp’s Shahnameh”として知られる。サファヴィー朝時代の写本芸術の最高傑作との誉れ高い。
ペルシア細密画といえばこれ抜きでは語れない、ってほど凄い作品。欲しい!と思ったあなた(私ですが)朗報です。なんと書籍化しています。
それがこれ(デラックスエディションもあるよ) アマゾンで買える!!そして安定のメトロポリタン美術館!!ちなみに私は神保町の某古本屋で見つけました。原価16,000のところがプレミアついて4万超えてた。
大きさ(かなりでかい)と値段で買えず、悔しさから背表紙を撫で撫でしてしまって友人にドン引きされました いつか買う。
そんな王書から1枚紹介します。でかくて申し訳ないです。
“The Feast of Sadeh”(サデの祝宴) 伝スルタン・ムハンマド画 1520-22頃
イラン伝説の王・フーシャングが火を発見し、その夜廷臣と動物たちを集めて火に潜在する力について講釈している様子を描いたもの。写本中でも最も壮麗な一枚。
この写本の絵はネット上でもたくさん見られます。興味を持った方はここがおすすめ→メトロポリタン美術館HP
オルハン・パムクの『私の名は赤』を読んでいる最中の者です。
「王書」の細密画のイメージがつかめなかったので、あちこちググった結果、こちらに辿りつきましたが、びっくり仰天!!!
素晴らしい絵ですね。
メトロポリタン美術館のHPも見ました。
ご指南、ありがとうございます。これで小説が数倍、楽しく読めます。
コメントありがとうございます!
このブログが少しでもお役に立ったようで嬉しいです。
『私の名は赤』の詳細を知らなかったので調べてみましたが、とても面白そうな小説ですね!今度読んでみようと思います。
「王書」はどの時代、どの地域でも非常に凝った細密画が描かれていますので比較するのも面白いと思いますよ。